15分単位、30分単位等の日々の労働時間の端数切捨ては違法となります。認められている労働時間の端数処理は、時間外労働の月の合計で、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理だけです(基発第150号)。この場合、法定内の時間外労働も含まれます(厚労省確認済み)。日々の時間外労働を15分単位、30分単位など、切り捨てをする旨を就業規則に記載する企業が稀にありますが、違法である限り、就業規則のその部分は無効となります。つまり、効力がありません。
では、どうすればよいでしょうか?分単位で足しこみ、月単位の端数処理をするか、または、日々の時間外労働の切り上げをするしかありません。この場合、注意するポイントが、2つあります。一つは、合法的な切り上げや、切り捨てを行う場合でも、実時間外労働数の把握は常に必要です。36協定に定める上限に抵触するかどうかは、実時間外労働時間数が問題となるからです。
今一つは、タイムカードの打刻やICカード等の分単位の記録が、すべて労働時間であるかどうか、という問題です。時間外労働が成立するためには、会社(上司)の事前の命令があるか、または(現実的には)時間外労働をせざるを得ない状況に置かれていることを、会社(上司)が、承認することが必要です。つまり、認める必要があります。これを「現認」といいます。日々の労働時間の現認は誰ができるのでしょうか?労働者でしょうか?監督署でしょうか?それは、その労働者の業務内容を掌握している直属の上司、またはそれに代わる者しかできません。それは、必ずしも、労働基準法上の管理監督者である必要はありません。この現認行為は、非常に重要で責任を伴います。この現認の記録を有効にし、現認による労働時間の記録に基づく時間外労働の管理がされるためには、充実した「残業管理簿」の作成運用が必要となります。更に、この残業管理簿の現認による記録と併せて、タイムカード、ICチップ等の出退勤の記録や本人の自己申告の記録も残しておきます。それは、現認の記録が、あまりにも、タイムカードや、ICチップ等の記録と乖離していないかどうかチェックするためです。
時間外労働の管理は、監督署にとっても、企業にとっても、永遠の課題です。時間外労働に関する様々な警告を、日々発信し続け、会社全体に、正確な労働時間管理に関する意識づけを行っていくことが、大切です。